医療データサイエンス講座

Medical Data Science Course

 信州大学医学部は、医学教育のIT分野に関する教育を充実させるとともに、医療の分野への新規科学技術の応用を推進する人材を育成するため、令和6年4月1日より信州大学医学部内に医療データサイエンス講座(寄附講座)を設置いたしました(寄付者:PSP株式会社)。
 本講座は信州大学初のAI及びデータサイエンスの医療応用に特化した講座であり、5つのミッションとして「医学生教育」「人材育成」「医学研究」「病院業務改善」「産学連携」を掲げています。
 「医学生教育」ではハンズオン(実際に手を動かして行う)研修などの実践的なIT教育を通じ、AI時代に求められる医師育成に貢献していきます。
 「人材育成」では学内にとどまらず学外の医療従事者を対象とした実臨床へのデータサイエンス応用のコンサルタント、「産学連携」による学内外の人材交流などを計画しています。
 また、データサイエンスを用いた診療各科の連携による「医学研究」及び「病院業務改善」を促進し、地域医療の充実を目指していきます。
 本講座は令和6年4月1日付で医療データサイエンス講座教授(特定雇用) 山田 哲が主たる担当教員として医療データサイエンスの教育・実践にあたります。
 信州大学医学部は人とデータ、大学と地域を繋ぐハブ(連結役)として皆様のお役に立てるよう尽力してまいります。

医学研究

プライバシー強化連合学習を用いた画像診断AI開発

 

  信州大学医学部と国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)サイバーセキュリティ研究所は、2023年に信州大学とNICTが締結した包括連携協定書に基づき、「医療・ヘルスケア分野のサイバーセキュリティ及びデータプライバシーの確保に関する協定書」を新たに締結いたしました。信州大学医学部医療データサイエンス講座では、医療現場の課題をデータサイエンスで解決するため、サイバーセキュリティ研究所セキュリティ基盤研究室において開発したプライバシー保護連合学習技術「DeepProtect」を用いて、AIを活用した放射線画像診断業務の効率化・高度化を目指しています。現在、NICT、立命館大学、滋賀医科大学、金沢大学及び三重大学とともに、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)のKプログラム「セキュアなデータ流通を支える暗号関連技術(高機能暗号)」に、研究課題「高機能暗号を活用した連合学習技術の高度化と医療データへの応用」を共同提案しています。これにより、NICT及び立命館大学は、高機能暗号技術により高度なデータプライバシー・セキュリティを確保した医療向けのDeepProtectを研究開発するとともに、信州大学、滋賀医科大学金沢大学及び三重大学は、それぞれが保有する豊富な医療データとNICTが提供するDeepProtectを用いて放射線画像診断AIを研究開発する異分野融合型の共同研究を開始します。

信州大学医学部医療データサイエンス講座は本共同研究において,放射線画像診断AI開発推進の中心的役割を担います。

 

空間コンピューティングの医学研究・医療業務への応用

   

 医学・医療分野において扱うデータ空間も 2D から 3D へと急速に広がっており、空間コンピューティングの医学研究への応用が現実のものとなってきています。Apple Vision Pro は視線・ジェスチャー・音声などの直感的なユーザーインターフェースと高精細ヘッドマウントディスプレイにより従来にないセンシング・シミュレーション・コミュニケーションを可能にする空間コンピュータであり、医学研究・医療業務への応用が注目されています。医療データサイエンス講座では学内限定の Apple Vision Pro の無料実機貸出サービスを実施しており、空間コンピューティングの医学研究・医療業務への応用を促進しています。ご要望に応じて研究用アプリケーション開発を共同で行いますのでご相談ください。

Apple Vision Pro レンタルサービス予約サイト


空中結像ディスプレイの医療応用

 

  MIRAI BAR株式会社、株式会社ケーアンドケー、株式会社ネクステッジテクノロジーと共に、空中結像ディスプレイと3Dジェスチャセンサーを組み合わせた次世代の画像診断デバイスを開発いたしました。取り組みの一部がSBC(信越放送)テレビ メディカル特番「メディカル産業最前線 ~医療現場のニーズをカタチに!」にて2024年3月3日(日)15:00~15:30に放送されました。

 

医学生教育

MATLAB Academic Teaching License を活用した医療データサイエンス教育

 

  医学部医学科4年次から5年次にかけて行われる放射線科臨床実習中に、当講座所有の MATLAB Academic Teaching License を活用した医療データサイエンス実習を行います。実習では午前中に言語としてのMATLABの基礎を学び、午後には実際の信州大学医学部附属病院にて使用されている医療情報と同じフォーマットの模擬データを用いたデータクレンジング・データ解析・機械学習モデルの実装を行います。実習期間中は MATLAB Training Suite を利用して全ての MATLAB オンライントレーニングを利用可能です。

 

病院業務改善

PEACE プロジェクト

 

  PEACEプロジェクトは「CT業務の見える化と行動提案による最適化」を目指す信州大学医学部附属病院の取り組みであり、令和5年度文部科学省医学部等教育・働き方改革支援事業の支援を受けて開始されました。本プロジェクトではプロセスマイニングを活用して改善すべき業務のプロセスを特定し(プロティビティLLC社に業務委託)、その知見に基いて放射線部門領域の検査予約から検査の実施・読影までの一連のプロセスを最適化する、世界で初めてとなる診断領域に特化したコマンドセンター・タイルをGEヘルスケアジャパン社と共同開発いたしました。令和6年度9月から本格稼働を開始し、実際の業務の最適化とアウトカムの最大化を目指して様々な関係部署からなるプロジェクトメンバーと共に開発を継続しています。取り組みの一部は外部メディアにも取り上げられており、今後の発展に大きな注目を集めています。
医療タイムス社 掲載記事(医療タイムス 長野県版 2024.03.27)
GEヘルスケアジャパン社 SNS記事(Facebook 2024.02.19)


信州大学医学部附属病院エコー検査中央化ワーキンググループ

 

  信州大学医学部附属病院では超音波検査業務の最適化を実現するため、院内全体の超音波検査機器の稼働状況の把握から運用までを中央化するワーキンググループを発足し、2025年度からのセンター開設を目指しています。医療データサイエンス講座はプロジェクトの推進に必要な稼働状況監視デバイスの開発、検査予約・運用システムの最適化、関係部署の連携推進に協力しています。


産学連携

現在進行中の産学連携プロジェクト

 

タカノ株式会社(2018年〜)
「AIを活用した肝および膵の画像診断に関する研究」

日本ケイデンス・デザイン・システムズ社(2018年〜)
「非接触音声操作による医療デバイス開発」「数値流体力学の画像診断領域への応用」

GEヘルスケアジャパン、プロティビティLLC(2023年〜)
「PEACE プロジェクト~CT業務の見える化と行動提案による最適化~」(令和5年度文部科学省医学部等教育・働き方改革支援事業)

MIRAI BAR 株式会社、株式会社ケーアンドケー、株式会社ネクステッジテクノロジー(2023年〜)
「空中ディスプレイによる医療用画像データの操作環境の開発」

株式会社朝日ラバー(2024年〜)
「ソフトマテリアルおよび適用デバイスの医療応用に関する共同研究」

国立研究開発法人情報通信研究機構・サイバーセキュリティ研究所(2024年〜)
「国立研究開発法人情報通信研究機構と国立大学法人信州大学医学部との医療・ヘルスケア分野のサイバーセキュリティ及びデータプライバシーの確保に関する研究に関する連携推進協定」

PSP 株式会社 (2024年〜)
「データサイエンスを活用した医学研究における連携研究の可能性の検討」

 

人材育成

本講座の究極の目標は「医療とデータサイエンスのハブ(連結役)となる人材育成」です。人材育成には教育と実践が必要不可欠であり、本講座はその一翼を担えればと願っております。研究生等の受け入れを随時募集しておりますのでお気軽にご相談ください。